病院トップの広報「ターゲットは職員」
日本一働きたいヘルスケアグループを
【病院広報アワード経営者部門大賞】
洛和会音羽病院(京都市山科区)
理事長・矢野裕典(やの・ゆうすけ)さん
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矢野さんは年に30本以上の動画に登場する。音羽病院の職員食堂での食事風景を配信すると、再生回数が9万に迫った。
もともとSNSが得意なわけではない。人前に出るのはむしろ苦手だったが、まだ副理事長だった5年ほど前、初代理事長の知人に勧められたのをきっかけに一念発起してSNSを始めた。
2020年4月、3代目理事長に就任してから「トップ広報」を本格化させた。今ではユーチューブのほか、インスタグラムやTikTokなどにも率先して登場している。
「私にとって、一番の顧客は職員です」と矢野さんは話す。トップ広報のターゲットも、京都府や滋賀県を中心に展開する「洛和会ヘルスケアシステム」の6,400人余の職員たちだ。
インスタグラムでは、洛和会の理念や活動を伝えて将来像を打ち出す。一層質の高いサービスを患者さんや利用者さんに届けるため、理念に共感してくれる優秀な人材を集めたいという狙いもある。
動画のラインナップは、洛和会の広報を担当する関連会社「アローフィールド」に勤務する20歳代の女性スタッフ2人が中心になって決める。
投稿をヒットさせるにはコツがあるらしく、流行に敏感な若い発想の大切さを実感させられてきた。そのため現場には、慎重になり過ぎず若手のアイデアを情報発信に生かすよういつも伝えている。
トップのそんな姿を見て、SNSの活用が組織全体に広がり、インスタグラムに登録されている洛和会の公式アカウントは、今では120を超えた。各部署の職員たちがアイデアを出し合い、患者さんや利用者さん向けに情報発信している。
この4月には、紙の院内広報誌「らくわっこ」をほぼ3年ぶりに復刊させた。SNSでの情報発信を進めるためいったんは休刊したが、デジタルではカバーし切れない役割が紙媒体にあると感じていた。
隔月で発行し、身近にいるスタッフの意外な特技など、なかなか知ることができない一面を紹介する。「皆で一緒に『らくわっこ』を読んで盛り上がってほしい」と矢野さん。
23年度には、洛和会全体で新卒298人を採用できた。矢野さんと若手職員たちとの座談会の動画を見て応募を決めた新人もいるといい、手応えを感じている。
病院広報アワードにエントリーしたのは今回が初めて。23年に「 HITO病院」(愛媛県四国中央市)が初代大賞に輝いたことを知り、「来年は自分たちも」と応募を決めていた。
実際にエントリーして、自分たちの病院を地域に知ってもらおうと奮闘する全国の広報担当者たちの取り組みを学ぶことができたのが大きな収穫だった。
目標は、日本一働きたいと思われるヘルスケアグループに洛和会を成長させること。そのためにトップ広報のレベルアップは不可欠だ。
「私の広報活動を支えてくれる全ての職員に感謝して、新しいことに皆で挑戦したい」と矢野さんは話している。
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